一度目の結婚で、妻と仕事（正確には仕事仲間）に裏切られ、種類の違う大きな二つの傷を受けたせいで新しく何かを信じる勇気を持てなくなったヒーロー。二度と同じ過ちを繰り返すまい…と選んだ道は「二度と傷つかない」という道。もう…一冊の９割方逡巡に次ぐ逡巡！とヒロインに対する予防線！でも、そんな及び腰のいい男も物語の中なら良いなぁ～！と、彼とヒロインそれぞれに「素直になって！」「もう一押しよ！」なんて声援を送りながら存外に楽しんで読みました。だからこそミス・エルナンデスの見せ場にジ～ン…！と来てしまったのかも知れないです。 ハーレらしい力強さが目立たないヒーローだけど、そっとヒロインを守ってるとこもツボです！

淡くキラキラと始まったかと思いきや…最後まで笑いが止まりませんでした！ヘザーも可愛いのですが、ヒーローが妙に可愛らしいです。ちょっとお馬鹿入ってる？のか、本物の恋のインパクトに惑っているのか、他の女性にフラフラしちゃうところがさらっと読めたのは、上杉作品の独特なサッパリ感が救ってくれたのかな…と思いました。 私がハーレに求める濃厚さはないけれど、読み終わってなんだか元気がでるような、ハッピーな気持ちになりました。

扉をめくるなり…と言った感じに繰り広げられる主人公二人のやりとりが、とにかく面白かったです。見開きのタイトル頁のイラストがとても素敵で、快活で理知的なスザンナと、二人を結びつける恋の濃厚さをよくあらわしているなぁ～と、読み終わってから改めて見返してしまいました。 マシューのような一本気な色男に、また別の作品でも会いたいです。

二人の間に愛が芽生えたくだりは納得で、美しい絵にどきどきさせられました。「兄に商才が無いことに薄々気付いていながら任せきりにした自分にも責任が」とヒロインは自分を責めますが・・・全てわかっていて取引の話を持ってくる兄には、妹に共に背負わせている性癖の秘密があり、また、兄自身には大切にしているであろう恋人もありとは。愕然としました。丸く収まったから良いようなものの、ヒロインは辛かっただろうなぁ…と、そちらの印象の方が強烈でした。

ヒロインの聡明さと熱さ、うらやましいくらいに好ましかったけれど、ヒーローは今一でした。 彼自身、奥様の事故で深い傷を負っているのが充分伝わって 来るので、頭で理解はできるのですが… 列車事故で奥さんを亡くした男性について「彼には子供が残ったじゃないか」だなんて。 自分が一番どん底と信じていられるセンチメンタリズムが苦手です。 ピカピカの珠に付いた一筋の傷の様に、ハンサムなだけに 気になってしまいました。

とにかくヒロインが可愛いくって、一喜一憂する彼女の心と一緒になって笑って泣きました。 絵が美しいのでコミカルなコマとのギャップが最高！ 最後までとても楽しかったです。 ちなみにあとがき「ギャレットにもの申す」での作者の涙は、私の涙でもあります！

『私を憎んで…　タイラー』　その件。 辛さと孤独を押し殺して、愛する人を守るために ぐっと唇を噛みしめるヒロインの表情に 無性に切なくなりました。 第一線から、無惨に追われたにもかかわらず 仕事を愛することを、どんな小さなところからも しっかりと噛みしめることのできる彼女が 大好きだと感じました。 大団円に、大満足でした！

ラストが子供で締められた　というのが、ちょっと拍子抜け。 冒頭と綺麗に合わさって、閉じてはいると思うのですけれど。 本来の姿である子爵一家に戻った３人の 幸せな様子がひと目ラストにみたかったです。 読んでいてとても楽しかったので、贅沢言っちゃいました。

あとがき代わりに載せてあるヒロイン達のその後をちょこっとのぞける１Ｐ漫画がとにかくかわいい！ 子供達のアザラシバージョンにキュン！となりました。

途中までは面白かったです。 でも、二人それぞれの苦しみが大きすぎて 「のぞみが叶ったのね」であっさり終わりにしてしまうには ちょっと･･。 読み終わった時本当に「それだけ～！？」って 口からでちゃいました。